ある地元の友人と中学校を卒業してから久しぶりにじっくり話す機会に恵まれた。
高校で別れてからはあまり会って遊ぶということも無かったし、会ったとしてもそれは大人数で集まった時くらいでじっくり話をするということは無かった。


もう5年の月日が流れてしまったが、成人式の後の同窓会でその彼は皆の前で2年後に今の彼女と結婚すると宣言したことがあった。俺はそれを聞いて、酔った勢いでバカなことを言っていると思いながらも一方で羨ましいとも思っていた。それはたぶんそこに未だに俺には見えない「幸せ」の一面があったからだと思う。


結婚すると語った2年後を待たずして彼らは別れたと、別の友人からその話を聞いたのはいつだったか。その時はそんなもんだろうなぁとしか思わなかった。それはありがちな話に聞こえた。


結局それはありがちな話のまま終わる。
先日、彼と飲みながらその時の少し詳しい話を聞いた。
彼は彼女からの突然の電話で別れを切り出された。あまりの衝撃にその瞬間は本当に何もできなかったらしい。でも、それでも彼は彼女のことが好きだったから、無様にもがきながら懇願した。そして、それは当然のこととしてプラスの結果には繋がらない。彼はホントに何もできず1週間は仕事も全く手につかない状態だった語ってくれた。


俺は再び彼に憧憬を抱いた。
たぶん俺はそんなふうに人を好きになることはない。できないんじゃないかと思う。
だから俺は彼を羨ましいと思い、そんな自分に少し涙が出そうになった。